KAKU TAX

費用になり、税金が下がるから、費用はどんどん支出するという考え方は、正しい考え方か?

税理士として、会社の経理を担当して、私が考えていることの紹介です。一部、それは違うというご意見などがあるかもしれませんが、私の見解の紹介です。

利益が出てるから、税金かかりそうなので、何とかできないかという相談を受けます。

これから、述べさせていただくことが、私のその問いに対する回答です。

経費になるから・・って支出することは大丈夫なのか?

よく、経費になるから、領収書を出してもらい支出すれば、税金もその分減るので法人運営の一番のメリットだといわれることがあります。これは、本当なのでしょうか。これは、一部分は本当ですが、トータルでは、必ずしも、メリットにはなっていないというのが、私の考え方です。経費になり、税金が減る、これは単年度で考えれば、正しいです。 目先、税金を払いたくないとお考えの方は多いでしょう。

売り上げをあげる、事業運営のために必要な費用

この件は、私は次のように考えています。その支出が、 売上の上昇に貢献するものであれば、これは、全く問題ない支出と言えます。 費用を計上(現金を支出)した分、将来売上があがる可能性がある (現金が入って来る可能性がある。)のであれば、現金が出ていっても、 将来入って来るので、問題はありません。また、売り上げをあげるために、必ず 必要な費用であれば、まったく問題ない支出と言えます。

必ずしも必要でない費用

それに対し、売上に貢献せず、支出しなければすむのに、経費になるから支出する (その分税金が減る)というのは、好ましくないと思います。その理由を説明します。 例えば、100万円売上げて、100万円経費に使っていたら、利益はゼロになります。 当然、利益にかかる税金はかかりません。その場合、単純に考えて、翌期首会社に は現金もゼロになります。なぜなら、売上げて、入って来た現金を全部費用 として支出しているからです。(この場合、前払いや未払いなどは、考慮しないで単純化して 考えます)

法人税、所得税はゼロ

利益は、ゼロなので、法人税(都民税均等割は、今回の話では考慮外)、所得税はゼロです。 しかし、消費税などのもうけに依存しない税金は課されます。

売り上げた分の現金相当は費用として支出している。そのうえで、消費税など はかかってくるという状況です。翌期首は、現金がゼロの状態です。社長の個人資金 を会社に貸し付けることにより、収入以上に出ていくその消費税などを決済する。

会社として、利益を計上し、もうけにかかる税金を負担し、その税引き後の利益を あげないと、会社に現金が残らず、再投資もできず、資金繰りが悪化するということです。

単純化した例

税込経理で、10年間、毎年100円売り上げて、100円を費用計上しているA会社が、 あるとしましょう。このA社は、10年間、もうけにかかる税金法人税等は、ゼロです(均等割 がかかりますが、これは、考慮外)10年会社運営をしても、現金が1円もないという事態 になります。もうけに係る税金を払わない分、消費税などもうけ以外に支払いが生じてし まった分、支払いの方が多くなってしまいます。その場合は、会社の役員が、貸し付ける という形式になると思います。それは、役員が役員報酬という形で、所得税や住民税が課せ られた後のお金を会社に再び貸し付けているということです。皆様の会社の財務諸表にも、 長期借入金などの名目で、多額の計上がなされている場合があるかもしれません。ただし、 この会社への貸付金でも、将来の会社のために、会社への社長の投資資金である場合は、 問題はないと思います。

相続税との関係

この役員の会社への個人の貸付金は、相続税の計算上は、個人の財産になります。 つまり、相続税課税対象の財産になります。 これは、貸付金という名目で財産にはなるが、お金のない会社に貸し付けている ことになり、現金にできない名目上の財産になります。自由に使えない(価値がない) ものに課税されてしまうことになります。非常に理不尽に見えると思います。

会社の株式の価値を計算するときには、負債として、この貸付金は純資産価額方式で計算した場合には引くことができます。株式の価値の計算上は、減額の効果があるのですが、100%の効果があるわけではありません。それは、類似業種標準価額などと折衷形式で評価する場合が多いためです。

また、その世代中に会社を辞める場合には、そもそも会社に現金がないので、債務免除として処理しなければならなくなり、収益を計上しなければなりません。つまり、今までは、利益が出なかったので、利益に係る税金を支払う必要がなかったのに、やめる段階になって、収益として課税されてしまうことになります。その部分は、会社から支払われた給与が原資となっており、その段階で一端所得税が課税されたものに、もう一度、課税されていると考えることができます。

つまり、会社運営上、一度、費用計上したものをもう一度、戻して課税していると考えることもできます。

私が考える会社運営の望ましい目標

売上をできるだけあげて費用をできるだけ押さえ、利益を計上し、その利益の一部を税金として支払い、税引き後の 利益(現金)を最大化すること。それを再投資するなどにより、さらに利益を増加させること。 また、会社を辞められる際には、退職金などとして、支払うことにより、最後に会社を空にできるようにしておくこと ではないかと思います。あたりまえのようですが、この流れが一番一生を通じて払う税金としては、 少ないのではないかと考えています。なんせ、法人税率は相対的に低く、また、退職金も所得税の中では、税率が低い ためです。

会社に税引き後の現金をためていくこと。これが、当面の目標となるのではないかと思います。いつまでも、法人税支払いのない世界を生きていると、最後にそのつけが回ってきます。法人税支払いをしないということは、一種の先取りで、負担は後々に増加してかかってくるものと思われます。

この議論は、少し、論理的に正確ではないと指摘されるかもしれません。今、簡単にご説明できるのは、これくらいですが、いろいろと実践的な例について、今後レポートしていきたいと思います。私が税理士として、考えていることについて紹介していきます。